婚姻費用の分担額は、過去に遡って請求できるものとされていますが、どこまで遡ることができるのか、その具体的な始期は、裁判所の合理的な裁量により決定されるものと考えられています。
考え方としては大きく二通りあり、①請求をしたときとする説と、②扶養が必要な状態が発生したときとする説とがありますが、実務上は、①であるとするものが多数です。②とすると、金額が大きくなり過ぎるとの発想からでしょうか。
請求をしたときといっても、それだけでは、明確な指針とはなりません。より具体的には、調停あるいは審判を申し立てたときと考えることが多いです。しかし、それ以前に請求の意思を明らかにした場合には、当該意思表明の時点とすることもあります。内容証明郵便等によって意思表明をした場合ですね。
本件審判においても、調停申立前の内容証明郵便によって、婚姻費用分担を請求する意思を確定的に表明したものと判断されていますが、本件では、ちょっとした特殊事情がありました。
本件事案では、⑴内容証明郵便発送→⑵調停申立→⑶調停取下げ→⑷調停の再申立となっており、調停申立時説を採るならば⑷と考えることもできた訳です。
しかし、それでは遅すぎるので、⑴か⑵で考えるのが相当ということになり、それならば⑵ではなく⑴にしようという価値判断をしたかもしれないと思われるのです。
婚姻費用分担を求めるとき、時間的余裕があるならば、内容証明を発送しておくと無難であると言えるかもしれません。
本件事案でもう一つ問題となったのは、婚姻費用の算定方法です。
平成15年に提案された算定方式と算定表が実務において定着していましたが、令和元年冬、これを改定する内容が提案されました。
改定により、全体的に算出方法の詳細が明示される等の改良が施されています。
本件事案では、令和元年に改定版算定方式及び算定表が公表される以前の時期の婚姻費用をも請求するものでしたから、その時期の婚姻費用については、改定版ではなく、従前の算定方式及び算定表によって算定されるのが相当ではないか、との考え方もあり得たのです。法の不遡及の原則という考え方ですね。
しかし、本件審判は、公表前の時期の婚姻費用も含めて、改定版での算定に合理性が認められる場合は、改定版での算定が相当であると判断しています(そもそも算定方式及び算定表は法規範ではなく、合理的な裁量の目安に過ぎないものと考えているものです)。
その上で、本件における合理性があるか否かにつき、改定版が、より現状の社会実態を反映させたものであることを確認した上で、本件審判において婚姻費用が請求された改定版公表前の期間についても、その当時の社会実態を踏まえて、これを反映させているものと評価し、その合理性を認めました。
両要件を通じて柔軟に結論を導いた合理的な判断であったと思われます。
考え方としては大きく二通りあり、①請求をしたときとする説と、②扶養が必要な状態が発生したときとする説とがありますが、実務上は、①であるとするものが多数です。②とすると、金額が大きくなり過ぎるとの発想からでしょうか。
請求をしたときといっても、それだけでは、明確な指針とはなりません。より具体的には、調停あるいは審判を申し立てたときと考えることが多いです。しかし、それ以前に請求の意思を明らかにした場合には、当該意思表明の時点とすることもあります。内容証明郵便等によって意思表明をした場合ですね。
本件審判においても、調停申立前の内容証明郵便によって、婚姻費用分担を請求する意思を確定的に表明したものと判断されていますが、本件では、ちょっとした特殊事情がありました。
本件事案では、⑴内容証明郵便発送→⑵調停申立→⑶調停取下げ→⑷調停の再申立となっており、調停申立時説を採るならば⑷と考えることもできた訳です。
しかし、それでは遅すぎるので、⑴か⑵で考えるのが相当ということになり、それならば⑵ではなく⑴にしようという価値判断をしたかもしれないと思われるのです。
婚姻費用分担を求めるとき、時間的余裕があるならば、内容証明を発送しておくと無難であると言えるかもしれません。
本件事案でもう一つ問題となったのは、婚姻費用の算定方法です。
平成15年に提案された算定方式と算定表が実務において定着していましたが、令和元年冬、これを改定する内容が提案されました。
改定により、全体的に算出方法の詳細が明示される等の改良が施されています。
本件事案では、令和元年に改定版算定方式及び算定表が公表される以前の時期の婚姻費用をも請求するものでしたから、その時期の婚姻費用については、改定版ではなく、従前の算定方式及び算定表によって算定されるのが相当ではないか、との考え方もあり得たのです。法の不遡及の原則という考え方ですね。
しかし、本件審判は、公表前の時期の婚姻費用も含めて、改定版での算定に合理性が認められる場合は、改定版での算定が相当であると判断しています(そもそも算定方式及び算定表は法規範ではなく、合理的な裁量の目安に過ぎないものと考えているものです)。
その上で、本件における合理性があるか否かにつき、改定版が、より現状の社会実態を反映させたものであることを確認した上で、本件審判において婚姻費用が請求された改定版公表前の期間についても、その当時の社会実態を踏まえて、これを反映させているものと評価し、その合理性を認めました。
両要件を通じて柔軟に結論を導いた合理的な判断であったと思われます。
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