法律上の父子関係はあるけれども、現実の父子関係にはない場合において、夫婦が離婚するにあたり、その子の養育費を夫に請求することができるか、という問題です。

 かなり限定された事例を前提とする判決ですが、最高裁は、次のように判断しています。

 まず、事実の認定ですが、
1 夫は、婚姻関係の破綻後、子の出生から約7年後に初めて、子との間に自然的血縁関係がないことを知った。→もはや父と子の親子関係を否定する法的手段がない。
2 妻は、出産後間もなくして、父と子との間に自然的血縁関係がないことを知ったが、これを夫に伝えなかった。
3 夫は、婚姻中、相当に高額な生活費を妻に渡して、子の監護・養育のための費用を十分に分担してきた。
4 離婚後の子の養育費をもっぱら妻において負担することができないような事情もない。
 といった点を指摘しています。

 その上で、子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお、養育費の請求は権利の濫用であると判断しました。

 結論は妥当なものであると思料しますが、「権利の濫用」ということは、自然的血縁関係がなくとも、原則として権利はあるものと捉えたうえで、例外的にその行使が濫用であると判断される場合があるということになります。
 この理論構成をどのように評価することによって、判断が分かれそうですね。